通信の秘密の法律上の建てつけ
きっかけ
先週、あるIT系イベントをきっかけに、以下のような記事が話題になりました。
電気通信における「通信の秘密」について解説します(追記あり)
わたしは、一応、情報系の資格を持っているうえ、法律系のお仕事をさせていただいているのですが、恥ずかしながら、「通信の秘密」について、きちんと考えたことはありませんでした。
通信の秘密とは
通信の秘密というのは、憲法に保障された権利です。
ざっくりいうと、ネットで何か情報知りたいと思ったとき、その人が知りたいと思ったことじたいは、国家や他人に知られずに済む、という権利です。
憲法が保障するのだから、通信の秘密が侵害されることはないだろう、と思いがちですが、実際はそうではありません。
というのも、通信の秘密を守ったまま、ウェブサイトを利用することはできないからです。
クライアントとwebサーバーの間には、DNSサーバーと呼ばれる事業者がいて、交通整理してあげなければいけないのです。
ネットがつながる仕組み
たとえば、わたしが「Googleにアクセスしたい」と思ったとします。
その場合、Googleのwebサーバーの場所を、DNSサーバーに探してもらわなければいけません。
この時点で、DNSサーバーには、わたしがGoogleにアクセスしたがっているということを、知られてしまうことになります。
つまり、わたしがGoogleにアクセスしたいという通信の秘密は、侵害されています。
侵害と違法性
では、DNSサーバーを運用している会社(たとえば、NTT系列のプロバイダ企業など)が、違法になるのかというと、もちろん、そんなことにはなりません。
この理屈づけが、法律のおもしろいところでもあります。
上記のブログ記事では、「たとえば、患者の体にメスを入れる行為は、外形的には傷害罪を構成しますが、医師が医療行為として行う場合は正当業務行為として違法性が阻却されます。」と解説されています。
つまり、通信の秘密は侵害しているものの、それが正当業務行為なので、違法ではないことになっている(違法性が阻却される)ということです。
まとめ
権利の侵害か、侵害でないかの判断と、その違法性が阻却されるか、されないかの判断という、2段階になっているところが、権利の保障と技術的な仕組みとの折衷案になっているのだなと思いました。